日本映画史に燦然と輝く『男はつらいよ』シリーズは、1969年から2019年までに全50作が制作された長寿映画シリーズです。
国民的キャラクター・車寅次郎(通称:寅さん)が、日本中を旅しながら繰り広げる人情ドラマと笑いに、多くの人々が心を打たれてきました。
とはいえ、50本もの作品があるため「どの順番で観ればいいの?」「おすすめの回は?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
この記事では、公開順・時系列順・テーマ別など、さまざまな“見る順番”を解説しつつ、初心者にもおすすめの作品や楽しみ方まで、徹底的にご紹介します。
これから『男はつらいよ』の世界に触れたい方も、改めて作品を振り返りたい方も、必見の内容です。
『男はつらいよ』シリーズの“背景と時代”を知る

戦後日本、昭和/平成を背景にしたシリーズ誕生の背景
『男はつらいよ』は、1969年に始まり、2019年に公開された第50作『男はつらいよ お帰り 寅さん』まで半世紀にわたって続いた日本映画界の金字塔です。
このシリーズは、戦後日本の成長とともに歩んできた歴史的作品であり、特に昭和から平成にかけての庶民の暮らしや価値観が色濃く反映されています。
寅さんこと車寅次郎が、全国を旅しながら出会う人々との交流を描くことで、当時の社会情勢や人間模様が自然と浮かび上がる作りになっているのです。
監督 山田洋次と主演 渥美清のコンビが築いた“寅さん像”
シリーズを通じて監督を務めた山田洋次氏と、主演の渥美清氏の名コンビが生んだ「寅さん」は、日本人なら誰でも知る国民的キャラクターとなりました。
自由奔放で優しく、人情に厚いが恋には不器用というキャラクターは、渥美清氏の即興力と山田監督の丁寧な演出によって魅力的に描かれ続けました。
この絶妙なバランスこそが、『男はつらいよ』が愛される大きな理由の一つであり、シリーズを通してキャラクターの一貫性と成長を楽しむことができます。
登場人物&柴又(東京・葛飾区)のロケ地が映した日本の日常
物語の舞台となる東京都葛飾区柴又は、寅さんの実家である「とらや」がある場所として知られ、ロケ地としても全国的に有名になりました。
柴又帝釈天や参道の風景、そして家族との日常が描かれる中で、昭和の東京下町の雰囲気や人情が丁寧に映し出されています。
このように『男はつらいよ』はロケ地を通じて、日本の各地の風景と文化を描く“旅する映画”でもあり、時代の移ろいを感じられる映像記録としての側面も持っています。
長寿シリーズが語り継がれる理由:共感と笑いと哀愁
『男はつらいよ』は、単なるコメディ映画ではありません。
そこには日本人の心の奥にある“ふるさと”や“人情”への共感が込められており、寅さんの失恋や家族とのやりとりから笑いと哀しみが同居するドラマが描かれています。
その普遍的なテーマと情感豊かなストーリー展開は、どの時代の観客にも通じる力を持っており、世代を超えて多くの人々に語り継がれています。
“見る順番”の選び方ガイド — 公開順?時系列?テーマ別?

公開順:映画館・劇場公開順による鑑賞メリット
『男はつらいよ』シリーズは、1969年から1995年までほぼ毎年新作が公開され、その後も2019年に第50作が発表されました。
公開順で鑑賞することの最大のメリットは、シリーズの「時代感覚」や「キャラクターの成長」がリアルタイムで追える点にあります。
例えば、さくらの成長や家族構成の変化、タコ社長や源公など町の人々との関係性の変遷も自然と理解できます。
映画ごとの空気感や時代背景の違いを感じられることも、公開順ならではの楽しみ方です。
時系列(物語の前後関係)での鑑賞:登場人物の変遷を追うならこちら
基本的には公開順が時系列と一致している『男はつらいよ』シリーズですが、実際には回によって時間軸にずれがある作品も存在します。
寅さんの甥・満男の成長などが重要なテーマになってくる後半作品では、時系列順に見ることで家族関係の深みをより感じられます。
また、マドンナとの関係性が続編に登場することもあるため、登場順や人間関係を正確に把握したい場合は時系列に基づく鑑賞が有効です。
家族ドラマとしての『男はつらいよ』を味わいたい方には、特におすすめの順番です。
テーマ別:恋愛編/旅情編/家族編などの切り口で選ぶ新しい視点
50作品もある長大なシリーズを一気に見るのは大変です。
そのため、テーマ別に分類して見るのも一つの効果的な方法です。
例えば「恋愛編」では寅さんとマドンナの切ない関係に焦点を当て、「旅情編」では各地の風景や人々との出会いを堪能できます。
「家族編」では、妹さくらやおいちゃん・おばちゃんとの関係性に感情移入することができ、視点を絞ることでより深く作品世界に浸れます。
初心者向け:3〜5作でシリーズの魅力を体感できる入門ルート
「『男はつらいよ』を見てみたいけど、50作もあってどこから始めればいいか分からない」という方には、初心者向けのセレクト鑑賞がおすすめです。
例えば、
第1作(原点)、
第15作『寅次郎相合い傘』(シリーズ屈指の人気作)、
第22作『噂の寅次郎』(恋愛色が強い)、
第42作『ぼくの伯父さん』(満男との関係に注目)
などが挙げられます。
これらを見れば、寅さんの基本的なキャラクター性やシリーズの魅力を十分に味わうことができるでしょう。
時間が限られている人や、まずは試してみたい人に最適な鑑賞法です。
全50作+αリストを「時代別」「テーマ別」で分類紹介

①昭和時代(1970〜1980年代)作品群:“昭和の香り”と寅さん初期
『男はつらいよ』シリーズの最初期は、昭和の日本社会の空気を色濃く映し出しています。
第1作から第40作付近までが該当し、特に1970年代の作品は、高度経済成長期の活気や家族の在り方、地域のつながりなどが反映されています。
寅さんのキャラクターもよりコミカルで、登場人物たちのやりとりに独特の昭和らしいテンポと温かみがあります。
代表作としては、第15作『寅次郎相合い傘』、第13作『寅次郎恋やつれ』などがあり、寅さんとマドンナとの関係性も含めて初期の魅力が詰まっています。
②平成初期(1990年代)作品群:変化の時代における寅さん
1990年代に入ると日本社会はバブル崩壊後の変化の時代を迎え、作品にもその影響が見て取れます。
シリーズ後半では、寅さん自身の加齢や社会的価値観の変化がより顕著に描かれ、笑いだけでなく“しみじみとした余韻”が印象に残るようになります。
例えば、第45作『寅次郎の青春』や第48作『寅次郎紅の花』などは、人生の孤独や家族との距離感といったテーマに深く切り込んでおり、寅さんの内面描写も増えていきます。
③平成末期〜21世紀(2000年代)作品群:新しい視点での寅さん像
1996年に主演の渥美清さんが逝去したことでシリーズはいったん幕を閉じましたが、2019年に第50作『男はつらいよ お帰り 寅さん』が公開され、ファンに大きな感動を与えました。
この作品は新撮映像と過去の映像を巧みに組み合わせることで、亡き寅さんの“存在”を描きながら、満男と泉の成長物語として新しい視点で展開されます。
令和の観点から振り返る『男はつらいよ』は、過去の郷愁だけでなく、現代にも通じる価値観の再発見という意味で新たな役割を持っています。
各作品に簡易あらすじ・注目キャスト・おすすめ度を添えて
以下に、代表的な作品をいくつかピックアップしてご紹介します。
第1作『男はつらいよ』:寅さんが葛飾柴又に帰郷し、妹・さくらの縁談をかき乱す。シリーズの原点であり必見。
第15作『寅次郎相合い傘』:リリーとの名コンビが光る、シリーズ屈指の人気作。
第22作『噂の寅次郎』:恋と誤解が交錯する、切なくも笑える回。
第42作『ぼくの伯父さん』:満男の思春期と寅さんの関係が描かれ、家族ドラマとしても評価が高い。
マニア推薦!“隠れた傑作”“意外な連携回”を深掘り

評価が高い作品ベスト5+“知る人ぞ知る”作品ベスト3
『男はつらいよ』シリーズの中でも、特に評価が高いとされる作品を5本、そしてマニアが支持する隠れた名作を3本ご紹介します。
ベスト5:
①第1作『男はつらいよ』:記念すべきシリーズの原点。
②第15作『寅次郎相合い傘』:リリーとの相性抜群で、シリーズを代表する1本。
③第25作『寅次郎ハイビスカスの花』:沖縄を舞台にした感動作。
④第42作『ぼくの伯父さん』:満男と寅さんの絆に涙。
⑤第48作『寅次郎紅の花』:晩年の寅さん像を描いた成熟した1作。
隠れた傑作:
・第13作『寅次郎恋やつれ』:マドンナ・百恵さんが好演。
・第29作『寅次郎あじさいの恋』:情緒と季節感に溢れる佳作。
・第36作『柴又より愛をこめて』:シリーズにしては珍しい寅さんの“弱さ”に注目。
登場人物の変化を追う:寅さんVS妹・さくら/さくらの恋の行方
寅さんと妹・さくらの関係性は、シリーズを通して重要なドラマの軸となっています。
最初は兄に振り回される妹という構図ですが、物語が進むにつれ、さくらが自立し、母となり、そして家族を支える存在へと変わっていく姿が描かれます。
特に、さくらの夫・博とのやりとりや、満男の成長に対する反応は、現代の家庭像と重なる部分が多く、多くの視聴者が共感を覚えるポイントです。
寅さんの“口うるさいけど優しい兄”としての立ち位置が、毎回異なるエピソードに変化を加えています。
連作・映像テーマの発展(例:旅する寅さんシリーズ)
シリーズを通じて寅さんが全国各地を旅する姿は、多くの視聴者にとって魅力的な要素となっています。
この“旅する寅さん”シリーズとも言える構成では、東北、九州、北海道、沖縄など、各地の風土や人々との出会いが描かれ、それぞれの土地ならではの文化が浮き彫りになります。
映像美もシリーズの魅力の一つで、特に後期の作品では四季折々の風景を美しく映し出すカメラワークが光ります。
旅情と郷愁、そして人情を同時に味わえる映像詩ともいえる構成は、シリーズの大きな特徴です。
映画制作ノート/スタッフインタビューより浮かび上がる制作舞台裏
『男はつらいよ』の制作現場では、即興に近い演技や現場でのアイデアを活かした柔軟な撮影スタイルが採用されていました。
特に渥美清さんは脚本にないアドリブを得意とし、現場では笑いが絶えなかったと言われています。
山田洋次監督は、常に“変わらない寅さん”と“時代の移り変わり”のバランスに苦心しつつ、観客との距離感を大切にした演出を行ってきました。
スタッフの証言からは、緻密に計算された“自然さ”の裏にある努力と工夫が垣間見えます。
視聴ガイド&楽しみ方のヒント

配信サービス・レンタル・テレビ放送の活用法
『男はつらいよ』シリーズは、現在多くの配信サービス(例:U-NEXT、Amazon Prime Videoなど)で視聴可能です。
また、DVDレンタル(TSUTAYAやゲオ)でも取り扱いが豊富で、特定の作品だけを見たい場合には便利です。
さらにNHK BSプレミアムや民放の特集枠などで定期的に再放送も行われています。
放送予定をチェックしながら録画するのも、全作品制覇を目指すなら有効な手段です。
「この作品を観た後にはこの作品を!」という“つなぎ”推薦
シリーズには直接の続編的な回もあり、順番によって理解が深まる作品同士があります。
例えば、第15作『相合い傘』を観た後に第25作『ハイビスカスの花』を観ると、リリーとの関係性の変化がより感動的に伝わります。
また、第42作『ぼくの伯父さん』と第43作『寅次郎の休日』は、満男と泉のエピソードが続く構成になっており、2本続けて観るとより楽しめます。
このように、“つなぎ”鑑賞は物語のつながりやキャラクターの深みを増す上でとても効果的です。
家族で・ひとりで・友人と:シーンに応じた鑑賞シチュエーション
『男はつらいよ』は、年代やシーンに応じて幅広い楽しみ方が可能な作品です。
家族で観るなら、第1作や第9作など、穏やかなホームドラマ的な回がおすすめです。
一人でじっくり楽しむなら、第44作『寅次郎の告白』や第48作『紅の花』など、寅さんの哀愁が際立つ作品が向いています。
友人と笑いたい時には、第19作『寅次郎と殿様』や第27作『浪花の恋の寅次郎』など、コミカルな回が最適です。
ロケ地巡りやファンイベント:シリーズを“体験”する楽しみ方
『男はつらいよ』の世界は、画面の中だけにとどまりません。
実際に舞台となったロケ地、特に葛飾柴又には「寅さん記念館」があり、多くのファンが訪れる聖地となっています。
また、柴又以外にもシリーズ各地のロケ地(北海道、京都、長崎など)を巡ることで、映画の世界を体験することができます。
不定期に開催されるファンイベントや上映会では、共通の話題で語り合える場もあり、作品を“観る”だけでなく“参加する”楽しみも広がります。

