ほっと一息つきたい時に読む面白い小話:第7話「合格祝い」

ほっと一息小話

「ななまる、お前本当に受けるのか?」

親友のタケルが驚いた顔で言った。

「もちろん! ずっと憧れてたんだもん!」

ななまるは胸を張る。彼が目指すのは、全国的に有名なスイーツコンテスト『スイートマスターズ』。厳しい審査を経て、優勝者にはプロのパティシエへの道が開かれる。

けれど、周囲の反応は微妙だった。

「ななまるって、お菓子作りそんなに得意だったっけ?」
「前に作ってたクッキー、固すぎて歯が折れそうだったよね?」

そんな言葉が飛び交う中、ななまるは決して諦めなかった。

「甘いものが好きなら、美味しいものを作れるはず!」

彼のポジティブさは底なしだった。失敗を重ねながらも試行錯誤し、夜な夜なキッチンにこもる日々。

ついに、一次審査を通過。そして、最終審査の日がやってきた。

会場は、ホテルの豪華な宴会ホール。審査員の前に、ななまるは震える手でケーキを差し出した。

「僕のオリジナルケーキ、『ななまるスペシャル』です!」

クリームはふわふわ、スポンジはしっとり。上には鮮やかなフルーツが散りばめられ、見た目は完璧だった。

しかし——

「うん、見た目はいいね」
「……味はどうかな?」

審査員がひと口食べる。その瞬間、ななまるの心臓はバクバクと鳴った。

「これは——」

審査員の言葉が途切れ、会場に静寂が訪れる。

果たして、ななまるの運命は——!?

審査員がゆっくりと口を開く。

「……意外だな」

ななまるはゴクリと唾を飲んだ。

「スポンジはふんわりしていて、クリームの甘さもちょうどいい。でも……」

ななまるの心臓が止まりそうになる。

「少し、個性的すぎるね」

会場がざわめく。

「フルーツの組み合わせが大胆すぎる。柿とブルーベリーを合わせるなんて、普通は考えない。だが、それがクセになる味わいを生み出している」

「確かに。最初は戸惑ったが、食べるほどにハマる」

「しかし、万人受けするかというと……難しいところだな」

ななまるは複雑な気持ちだった。褒められているようで、そうでもないような……。

「結果は、後ほど発表する。楽しみに待っていてくれ」

審査員の言葉に、ななまるは深くうなずいた。

結果発表の時間。緊張に包まれる会場で、ななまるは拳を握りしめた。

「優勝は——」

司会者が名前を読み上げる。

「エントリーナンバー12、佐倉さくらさん!」

——ななまるではなかった。

悔しさがこみ上げる。でも、不思議と涙は出なかった。

「次に、特別賞の発表です」

特別賞?

「個性的なアイデアが評価され、今後の活躍が期待される方に贈られます。受賞者は——エントリーナンバー70、ななまるさん!」

会場が拍手に包まれる。ななまるは目を見開いた。

「俺が……特別賞?」

「やったじゃん!」

タケルが駆け寄り、肩を叩く。

「お前のケーキ、やっぱりすごかったんだよ!」

審査員の一人が微笑む。

「ななまる君、君のケーキには可能性を感じる。独創的な感性を磨けば、もっと素晴らしいパティシエになれるよ」

ななまるは、大きく深呼吸した。

——悔しくないと言えば嘘になる。でも、認められた。俺のケーキが、俺の努力が。

「ありがとうございます!」

こうして、ななまるの挑戦は新たなステージへと続いていく。

合格祝いのケーキは、自分で作ることにしよう。最高に美味しい、世界に一つだけの味を。

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