ほっと一息つきたい時に読む面白い小話:第8話「夏バテ気味の「ななまる」奮闘記」

ほっと一息小話

今年の夏は、記録的な猛暑だった。
街を歩けば、熱気がもわっとまとわりつき、アスファルトがジリジリと靴底を焼く。

愛称「ななまる」は、エアコンの効いた部屋から出るたびに、体力がスーッと溶けていく感覚に襲われていた。
「これが…世に言う夏バテってやつか…」

朝から食欲もなく、冷たい麦茶ばかり飲んでいたら、余計に体がだるくなってきた。
SNSを開くと、友人たちが「夏バテ予防レシピ」や「簡単ひんやりスイーツ」を楽しそうに投稿している。
それを眺めながら、ななまるはため息をついた。

「よし…何とかしないと、このままじゃ夏を乗り切れない…」

行動派(…のはず)のななまるは、さっそく夏バテ解消の情報収集を開始した。
スマホで「夏バテ 改善 食べ物」と検索し、
「豚肉の生姜焼き」「梅干し」「ゴーヤチャンプルー」といったキーワードが並ぶページをスクロールする。

「うーん…どれも美味しそうだけど、今は作る元気が…」
そこで目に止まったのは、「簡単!5分で作れる冷やしうどん」のレシピだった。

しかも、薬味にミョウガと大葉を乗せれば、香りで食欲アップ間違いなし、と書いてある。
ななまるは思わず「これだ!」と声を上げた。

エアコンの効いた部屋から一歩出て、スーパーまで歩く。
汗だくになりながらも、袋いっぱいに食材を詰めた。
――それが、この夏のちょっとした冒険の始まりになるとは、ななまるはまだ知らなかった。

帰宅したななまるは、さっそく冷やしうどん作りに取りかかった。
氷水でキュッと締めたうどんを器に盛り、刻んだ大葉とミョウガをたっぷり乗せ、冷たいつゆを回しかける。
その香りだけで、失われていた食欲が少しずつ戻ってくる。

「いただきまーす!」
ズルズルッ…と一口すすった瞬間――

……冷たすぎて、歯にキーンとくる痛み。
「うぅっ、夏バテよりも先に知覚過敏が来た…!」

さらに、ミョウガを乗せすぎたせいで、なんだか頭がふわっとしてきた。
「あれ…? 私、涼しくなるはずが、なんでこんなにボーッとしてるんだろう…」

結局、うどんを食べ終えるころには、涼しいけれど妙に眠たいという不思議な状態に。

そのままソファに倒れ込んだななまるは、気づけば夕方までぐっすり昼寝していた。
目が覚めると、あれほど重かった体が嘘のように軽くなっている。

「…あれ? 夏バテって、もしかして“ちゃんと休む”のが一番の特効薬じゃない?」
そうつぶやきながら、ななまるは麦茶を一口。

冷やしうどん作りの冒険は、思わぬ形で終わったが――
その日以来、ななまるは「夏バテ解消法」として、
冷たいうどん+昼寝という、誰もが笑ってしまうシンプルなレシピを密かに愛用している。

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